基礎知識
枕飾りとは、遺体を安置した枕元に臨時の祭壇を設けて、仏式なら僧侶にお経をあげてもらうわけだが、その祭壇を「枕飾り」と言い、枕元で行う行事を「枕づとめ」、お経を「枕経」と言う。
枕飾りは、葬儀関係者が整えてくれるが、グラスや茶わん、はし、ご飯、枕だんごは遺族側で用意をする。
遺族が枕飾りを整える場合は、簡単な白木の台、あるいは小机に白布をかけたものを用意する。そこに燭台、線香立て、線香、ろうそく、枕だんご、水を入れたグラス、故人が使用していた茶わんにご飯を山盛りにして、中央にはしを立てたものを供える。
花立てには、櫁を一枝、あるいは白い菊の花を一輪立てるようにする。
また、枕だんごをつくる場合は上新粉を用いる。つくっただんごは、三方や白い皿などに載せていくが、その数は、六、十三、四十九個などと地方によって異なっている。
枕づとめには遺族や近親者も
枕経をあげてもらうときは、遺族や近親者も同席し読経が終わると血縁の濃い順番に線香をあげてお参りをする。服装は平服でもかまわない。
最近は枕づとめを省略することもあるが、省略する場合でも遺族の誰かがいつも遺体に付き添うようにして、枕飾りの線香やろうそくの火を絶やさないようにする。
十字架を故人の手にもたせる
カトリックの場合は、「終油の秘跡」の儀式が臨終前に神父によって行われる。これは死を前にした信者が、これまでの罪の許しを求め、神の恩恵を賜るための儀式で、神父が信者の額と両手に聖油を塗り、パンを一切れ与えるというもの。プロテスタントでは信者がまだ意識のあるうちに、牧師が「聖餐式」を行う。パンとブドウ酒を信者に与え、聖書の一節が朗読される。
仏式で行うように遺体に湯灌を行い、死化粧をするのは、キリスト教式でも同じだ。またプロテスタントでは末期の水をとることも多いようだ。
遺体は床に安置する。このときに決まったならわしなどは無いが、故人の手に十字架(カトリックの場合はロザリオ)をもたせたりすることが多いようだ。
枕元には、十字架を立て、ろうそくを灯し、白い花などを飾り、故人の愛用した聖書を置く。宗派によっては香をたくこともある。
故人が日ごろ食べていたものを用意する
末期の水や死化粧などは仏式と同じ。床は「北枕」にする家庭もあるが、とくにこだわってはいない。遺体を安置した部屋は、正式にはしめ縄を張るものだが、最近は省略する場合が多いようだ。
枕飾りには、白木の八足の案(八脚の小机)の用意をする。そこに榊とろうそく、三方には塩、洗い米、水と御神酒、そして故人が生前に常食としていた食べ物(常饌)を置く。常饌には魚などの生ぐさものでもさしつかえない。八足の案の上には、そのほかに小袋に入れた刃物を守り刀として置く。
屏風がある場合は、枕飾りのうしろに上下を逆にして立てておく。
枕直しのあと神社へ連絡する
枕飾りを整えることを神式では「枕直し」と言い、枕直しを終えたあと、故人が氏子となっていた神社へ連絡をする。以前は神社への連絡は、遺族が代理人を立てて知らせるのがしきたりとなっていたが、今日では電話での連絡でもかまわない。
北枕の習慣は、お釈迦さまの「涅槃」にならったもの
仏式では、湯灌後の遺体は北向きに寝かせるが、これは北枕といって、お釈迦さまが一切の苦や束縛から解き放たれた最高の境地「涅槃」にはいられたときの頭北面西の姿にならったものといわれている。
部屋の都合で北枕にできないときは西を枕にする。これは西方にあるとされる極楽浄土、すなわち西方浄土の仏教思想に基づいているようだ。
神式の場合も仏式と同じく北を枕にするが、こちらはかつての神仏混淆の時代に仏教思想から影響を受けたためであろうと思われる。キリスト教式およびそのほかの宗教では、原則的には寝かせる方向にとくに決まりはない。
Last update:2021/3/5